内科・皮膚科疾患のお話
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■麻疹とは
麻疹は麻疹ウイルスによって引き起こされる感染症で、一般的には「はしか」と呼ばれることもあります。
発熱や咳、鼻水といった風邪のような症状と発疹が現れます。肺炎、脳炎といった重い合併症を発症することもあります。
感染経路は、空気感染、飛沫感染、接触感染で、その感染力はきわめて強く、免疫を持っていない人が感染すると、ほぼ100%が発症します。
小児だけではなく、大人も注意が必要です。
■麻疹の症状
典型的な麻疹の症状とは、①発熱➁全身性発疹➂咳➃鼻水⑤目の充血などの粘膜症状(かぜ症状)が揃ったものを指します。
感染の約10~12日間の潜伏期間の後に、38℃程度の発熱やかぜ症状がはじまり、2~4日発熱が続いたあと、39℃以上の高熱とともに発疹が出現します。
発疹の出現する前後1~2日には、ほほの粘膜にコプリック斑と呼ばれる小さな白色の斑点が観察されることがあります。
全身の免疫力が低下するため、肺炎、中耳炎などを合併することがあり、脳炎を発症することもあります。
合併症がなければ、主な症状は7~10日で回復しますが、免疫力の回復には1か月程度を要するため、それまでは他の感染症にかからないよう十分な注意が必要になります。
■麻疹の感染経路・感染力
空気感染(飛沫核感染)が主な感染経路です。
麻疹患者が咳やくしゃみをすると、周囲に麻疹ウイルスを含んだしぶきが飛び散り、しぶきが乾燥してウイルスがしばらく空気中を漂います。
このウイルスを含んだ空気を吸った人たちに感染する恐れがあります。その他に飛沫感染、接触感染もあります。
感染力はきわめて強く、麻疹の免疫がない集団に1人の発症者がいたとすると、12~14人の人が感染するとされています(インフルエンザでは1~2人)。
不顕性感染(感染はしても発症しない=症状が出ない)はほとんどなく、感染した人の90%以上が発症します。
周りへ感染させる期間は、症状の出現する1日前(発疹出現の3~5日前)から発疹消失後4日くらいまで(または解熱後3日くらいまで)とされています。
□感染経路の種類
①空気感染
ウイルスや細菌が空気中に飛び出し、1m以上超えて人に感染させることです。
→麻疹(はしか)、水痘(水ぼうそう)、結核など
➁飛沫感染
ウイルスや細菌が咳、くしゃみなどにより、細かい唾液や気道分泌物につつまれて空気中に飛び出し、約1mの範囲で人に感染させることです。
→百日咳、風疹、インフルエンザ、おたふく風邪(流行性耳下腺炎)など
➂接触乾癬
皮膚や粘膜の直接的な接触、または医療従事者の手や医療器具、その他手すりやタオルなどのような物体の表面を介しての間接的な接触により、病原体が付着することで感染することです。
→咽頭結膜熱(プール熱)、インフルエンザなど
➃経口感染
ウイルスや細菌に汚染された食べ物を、生または十分に加熱しないで食べた場合や、感染した人が調理中に手指等を介して食品や水を汚染し、その汚染食品を食べたり飲んだりした場合に感染します。
糞便が手指を介して経口摂取される場合を特に糞口感染といいます。
→感染性胃腸炎(ロタウイルス、ノロウイルス)など
■麻疹の合併症
麻疹にはさまざまな合併症がみられます。
合併症の半数が肺炎です。また、頻度は低い(麻しん患者の1000人に1人)ですが、脳炎を合併することがあります。この二つは麻しんによる二大死因となっています。
他の合併症としては、中耳炎、クループ(のどの喉頭という部分の炎症で、ゼイゼイしたり、呼吸困難になったりします。)、心筋炎などがあります。
ごく稀(麻しん患者の10万人に1人)ですが、麻しんにかかってから7~10年後に、知能障害、運動障害が徐々に進行し、発症から平均6~9ヶ月で死に至る亜急性硬化性全脳炎(SSPE)を発症することがあります。
■麻疹の予防接種
麻疹は感染力が強く、空気感染もするので、手洗い、マスクのみで予防はできません。麻疹の予防接種が最も有効な予防法といえます。
また、麻疹の患者さんに接触した場合、72時間以内に麻疹ワクチンの接種をすることで、麻疹の発症を予防できる可能性があります。接触後5、6日以内であれば、γ-グロブリンの注射で発症を抑えることができる可能性がありますが、安易にとれる方法ではありません。詳しくは、かかりつけの医師とご相談ください。
定期接種の対象者だけではなく、医療・教育関係者や海外渡航を計画している成人も、麻疹の罹患歴がなく、2回の予防接種歴が明らかでない場合は予防接種を検討してください。
麻疹含有ワクチン(主に接種されているのは、麻疹風疹混合(MR)ワクチン)を接種することによって、95%程度の人が麻疹ウイルスに対する免疫を獲得することができると言われています。
また、2回の接種を受けることで1回の接種では免疫が付かなかった方の多くに免疫をつけることができます。
2006年度から1歳児と小学校入学前1年間の小児の2回接種制度が始まり、2008年度から2012年度の5年間に限り、中学1年生と高校3年生相当年齢の人に2回目のワクチンが定期接種として導入されていました。
当院でも15歳以上を対象に麻疹風疹混合ワクチンの接種を行っております。(注文制)ご希望の方は受付スタッフまでお声がけをお願い致します。
□ワクチンについてのQ&A
Q.妊娠の可能性がある場合は?
A.一般に生ワクチンは、胎児への影響を考慮して、全妊娠期間で接種を行わないことになっています。
妊婦が麻疹ワクチンを接種することはできませんが、妊婦がいる家庭で、妊婦と同居する家族がワクチンを接種することは問題ありません。麻疹ワクチンを受けた者からワクチンウイルスが他人に感染することはないことが確認されています。
Q.過去に麻疹または風疹にかかったことがあっても、麻疹風疹混合ワクチンを接種して大丈夫ですか?
A.過去に麻疹または風疹にかかったことに間違いがなければ、成人になっても十分な抗体を保持していることが多いので、当該疾患の予防接種の必要はありません。
ただし、他の疾患と思い違いしている場合もあります。特に風疹は思い違いの頻度が高いといわれています。過去に麻疹または風疹のいずれか一方に罹ったことのある人が、麻疹・風疹の混合ワクチンを接種することは差し支えありません。
Q.麻疹にかかって免疫をつけた方が、ワクチン接種よりもよいのでは?
A.自然感染で麻疹を発症すると、重症化や合併症による後遺症のリスク、また死亡する可能性もあります。そして周りの人にそのようなリスクを与えることにもなります。
麻疹に自然にかかった後の強い免疫というのは、そのような代償のあとに得られるものです。
一方、ワクチンを2回接種すれば約99%の人が抗体を保有することになり免疫を持続させることができます。ある程度の頻度で副反応があることは避けられませんが、症状の重さも重症になる割合も麻疹にかかった場合と比べて格段に低いものです。周りの人に麻疹を感染させるリスクもありません。
■麻疹にかかりやすい人とは
最近は、大きな流行が少なくなって大人になるまでに麻疹にかかったことがない人や、小児の時に予防接種をしたという人でも、大人になって感染するという例が増えています。
麻疹にかかったことがなく、かつ麻疹のワクチンを一度も接種したことがない人は、麻しんに対する免疫を持たないので、最もかかりやすい人たちということになります。
早めのワクチン接種をお勧めします。
■麻疹かもしれないと思ったら
発疹、発熱などの麻疹のような症状がある場合は、麻疹の疑いがあることをかかりつけ医または医療機関に電話等で伝え、受診の要否や注意点を確認してから、その指示に従ってください。
また麻疹の感染力は非常に強いと言われています。医療機関へ移動される際は、周囲の方への感染を防ぐためにもマスクを着用し、公共交通機関の利用を可能な限り避けてください。
5月に入って都内で感染が確認され、感染力の強さから流行が懸念されている麻疹ですが
ワクチンを打った方が良いかどうか判断に迷った場合、どのくらい自身が抗体を持っているかお調べすることができます。予約なしで検査(採血)可能ですので、お気軽にお立ち寄りください。
何かご不明点ございましたら当院までお問い合わせください。
東京メトロ東西線・葛西駅西口より徒歩5分、葛西内科皮膚科クリニックです。