食事をするとその半分以上はブドウ糖というお砂糖として腸から吸収されます。
ブドウ糖は血液中を移動し体のすみずみまで運ばれ、そしてすい臓で作られるインスリンと呼ばれるホルモンの働きに助けられからだ中の細胞にくまなく取り込まれていきます。
そして最終的に私たちが生きていくのに必要なエネルギーに姿を変えていきます。
糖尿病になると、インスリンの分泌量が減ったり、効きが悪くなったりします。
そのために血液中のブドウ糖が細胞に取り込まれにくくなり、結果的に血糖値が上昇します。糖尿病で血糖値が高くなるのはそのためです。
血糖値が高くなると口の中、のどの渇きを感じたり、また排尿回数が増えたり、夜中の尿意を感じるようになりますがそれほどつらいと感じない方が多くいらっしゃいます。
自覚症状は軽いのが糖尿病の特徴です。しかし5年、10年とその状態を放置することにより心筋梗塞や脳梗塞といった深刻な合併症により取り返しのつかない状況に陥られる方が多くいらっしゃいます。
一方で定期的に通院することで良好なコントロールを維持し、合併症が引き起こす深刻な事態を避け、安心できる生活を送っていただきたいと思います。
糖尿病は細かく分けると4種類に分類することができ、それぞれ発症原因や治療法が異なります。
糖尿病の種類
1型糖尿病
1型糖尿病はまだ原因が完全には解明されていませんが、主に免疫系の異常によって発症すると言われています。すい臓のβ細胞に攻撃をしてしまう異常抗体(自己抗体)などによってβ細胞のほとんどが死滅し、インスリン分泌ができなくなってしまう病気です。15歳以下の子どもに発症し、急激に進行していく場合と、30歳から50歳くらいに発症して少しずつβ細胞が破壊されていくタイプ(緩徐進行型1型糖尿病)があります。いずれも飲み薬では血糖値を十分にコントロール出来ず、強化インスリン療法が必須となります。
2型糖尿病
いわゆる生活習慣病から発症する糖尿病です。食べ過ぎや運動不足、肥満、ストレス、遺伝的な要素が関係し発症します。血糖値が高い状態が続くことで、すい臓のβ細胞のインスリン分泌能が低下し、運動不足や肥満がある場合は、インスリンの効き目が悪くなります。まずは食事療法や運動療法を行い、それでも改善されないようでしたら飲み薬を始めます。2型糖尿病は進行性の病気とも言われており、飲み薬で十分な血糖コントロールが得られなくなった場合はインスリン治療を開始します。
妊娠糖尿病
妊娠後に発症した糖尿病のことを「妊娠糖尿病」と言います。妊娠中に起こるホルモンの変化が原因で血糖が上昇すること考えられています。たとえ妊娠糖尿病と診断されても、しっかりとした食事管理と血糖管理(場合によってはインスリンを用います)すれば胎児への影響を与えることはないといわれていますので心配はありません。出産後には血糖コントロールが速やかに改善しますのでほとんどの方がインスリンを中止することができます。ただしその後の食習慣によっては再び血糖が上昇し、今度は糖尿病を発症する可能性が高くなりますので、出産後も定期的に糖尿病の検査を行うことが大切です。
その他
血糖を上げるホルモンが過剰に分泌する病気や、長期的なステロイドの投与など、薬によって血糖が上がり糖尿病を発症することがあります。またインスリンを分泌するβ細胞は膵臓にのみ存在するため、膵臓がんなどによって糖尿病になる場合もあります。診断時や急に血糖が上昇する場合などには、血糖上昇の原因の精査を行う必要があります。
糖尿病の合併症
糖尿病は、初期症状がほとんどありません。従って、早期の発見にて定期的な健康診断が大切になります。糖尿病を発症し、高血糖状態が続くと、合併症を引き起こすことが知られています。できるだけ早めに糖尿病を発見し、合併症を併発しないようにしましょう。以下、糖尿病の急性・慢性の合併症をご紹介します。
急性合併症
糖尿病性ケトアシドーシス
糖尿病性ケトアシドーシスは、極度のインスリン不足が原因で発症し、Ⅰ型糖尿病やⅡ型糖尿病でもペットボトルの飲み過ぎ(ペットボトル症候群)でみられる急性合併症です。インスリンが不足すると細胞は血液中のブドウ糖を取り込むことが出来なくなり、ブドウ糖の代わりに脂肪を分解してエネルギーを作ります。この時に産生されるケトン体が血中に増えることにより、血液が酸性になり、口渇、多尿、嘔吐、腹痛、昏睡症状を引き起こします。
高浸透圧高血糖症候群
高浸透圧高血糖症候群は、高齢者に多い合併症で、高血糖と高度の脱水からなる急性合併症です。
血糖値が異常に高くなると、糖は尿中に排泄されます(尿糖)。尿糖が増えると、浸透圧利尿により、体内の水分は尿として排泄され、体は脱水状態になります。脱水状態になると、より血糖値は上がり、さらに尿量が増え、脱水が進むという悪循環に陥ります。食欲不振による脱水や、感染症、手術、利尿剤の使用などが誘因となることが多く、口渇、倦怠感、悪心、嘔吐の症状から重症化すれば痙攣や昏睡状態になり死に至る恐ろしい合併症です。
慢性合併症
神経障害
糖尿病の神経障害はまず両足裏から症状が出てくることが特徴です。足の裏に膜が張っているような感じや、雲の上を歩いている感じなどと言われる患者様もおられます。症状が進行すると手先からも同様のしびれが出現し、痛みの感覚が鈍くなっていきます。神経障害による知覚鈍麻は、小さな傷に気付くのが遅くなり、足の潰瘍や重篤な感染症となってから発見され、最悪、足の切断といったことになる場合もあります。さらに神経障害が進むと、運動神経や自律神経も障害され、足に力が入りにくくなったり、立ちくらみや、腸の運動にも異常をきたし、便秘や下痢を繰り返したり、排尿障害、勃起障害の原因にもなります。
当院では糖尿病専門医と皮膚科専門医が在籍しています。足のケアなどは糖尿病患者様にとって非常に重要であり、入浴時には足の状態を確認する習慣を作っていただき、少しでも異常があれば早めにご相談ください。
網膜症
網膜とは、眼底(目の奥)にある神経で、たくさんの血管が通っています。
糖尿病になるとこの微小血管が障害を受け、詰まったり出血を起こしたりします。最初のうちは小さな出血で無症状の場合が多いですが、大きな出血が起きたり網膜剥離が起きたりすると突然視力低下や視野の異常を自覚することになります。糖尿病性網膜症は失明の大きな原因の一つになっています。そのため糖尿病になった時点で、自覚症状がなくても眼科に定期的に受診し、できるだけ早期に発見し、治療を開始しましょう。当院では提携している眼科クリニック・病院へ紹介いたします。
腎症
腎臓は、体内にある老廃物や毒素尿として排出しています。糖尿病になると、その腎臓の機能が低下し、最終的には尿が出なくなってしまいます。そうなると老廃物や毒素が体内に溜まり人は生きていけません。透析とは血液を大量に抜いて、それを機械で浄化し体内へ戻す治療です。
透析は病院のベッドに長時間縛られる生活になり、体に毒素や、水分を貯めないためにも、厳しい食事・水分制限が課せられてしまいます。透析になる患者様の1番の原因が糖尿病です。透析にならないためにも日頃の血糖コントロールをきちんと行いましょう。
以上の合併症の他にも、食べ過ぎや運動不足があると高血圧や脂質異常症、高尿酸血症といった他の生活習慣病と合併したり、動脈硬化が進んで心筋梗塞や脳梗塞を引き起こしたりする可能性が増えます。さらに免疫力が低下するため、感染症が重症化し、肺炎や、腎盂腎炎、皮膚感染症(白癬症や蜂窩織炎)を起こしやすくなり、正常の人に比べがんの発症率も増加します。
血糖値をコントロールして、可能な限りこれらの合併症の発症を抑えるようにしましょう。