内科・皮膚科疾患のお話
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酒さとは、主に顔面の中央部(鼻、頬、額など)にできる慢性的な炎症性疾患です。赤み、ほてり、毛細血管拡張、丘疹(ブツブツ)、膿疱(膿を持ったブツブツ)などが現れます。
酒さの分類
酒さは、症状によって主に以下の4つのタイプに分類されます。
■紅斑毛細血管拡張型酒さ
最も一般的なタイプ。
顔の赤み、ほてり、毛細血管拡張が主な症状です。
■丘疹膿疱型酒さ
ニキビのようなブツブツ(丘疹・膿疱)が主な症状です。
赤みやほてりを伴うこともあります。
■鼻瘤型酒さ
鼻の皮膚が厚く硬くなり、凹凸ができるタイプ。
男性に多く見られます。
酒さの原因
酒さの原因はまだ完全には解明されていません。しかし、以下の要因が複雑に関与していると考えられています。
■ 血管の異常
顔の血管が拡張しやすく、炎症を起こしやすい状態になっていると考えられています。
温度変化、紫外線、刺激物などによって、血管が過剰に拡張することがあります。
■免疫系の異常
皮膚の免疫システムが過剰に反応し、炎症を引き起こすことがあります。
特定の微生物(ニキビダニなど)に対する過剰な免疫反応も関与している可能性があります。
■ 神経系の異常
顔の神経が過敏になり、わずかな刺激でも炎症や血管拡張を引き起こすことがあります。
酒さの症状
■紅斑・毛細血管拡張
顔の中心部(頬、鼻、額、顎)が赤くなりやすくなります。
一時的な赤み(ほてり)と、持続的な赤みが現れ、毛細血管が拡張し、皮膚表面から透けて見えます。
■丘疹・膿疱
ニキビのような赤いブツブツ(丘疹)や膿を持ったブツブツ(膿疱)ができます。
ただし、ニキビと異なり、コメド(面皰)は見られません。
■ほてり・灼熱感
顔がほてったり、ピリピリとした灼熱感を感じます。
刺激物や温度変化によって症状が悪化することがあります。
■眼の症状(眼型酒さ)
まぶたの炎症(眼瞼炎)、結膜炎、ドライアイなどを引き起こします。
目の充血、かゆみ、異物感などを伴います。
■鼻瘤
鼻の皮膚が厚くなり、赤く腫れ上がります。(特に男性に多い)
酒さの検査、診断
通常、酒さの診断に特別な検査は必要ありません。
医師により症状、発症時期、経過、既往歴、生活習慣などを詳しく問診し、視診によって皮膚の状態を確認し診断に至ります。
ただし、他の皮膚疾患との鑑別や、合併症の有無を確認するために、血液検査や皮膚生検などが行われる場合があります。
酒さの治療
酒さの治療は、症状の程度やタイプによって異なりますが、主に以下の方法があります。
■外用薬
□メトロニダゾール
抗菌作用と抗炎症作用があり、酒さの赤みやブツブツを改善します。2022年5月に保険適用となりました。
副作用は比較的少ないですが、皮膚の乾燥やかゆみなどが起こることがあります。
□アゼライン酸
抗菌作用、抗炎症作用、皮脂分泌抑制作用などがあり、酒さの症状を改善します。日本では保険適用外ですが、海外では酒さの治療薬として広く使用されています。
刺激が少ないため、敏感肌の方にも使いやすいとされています。
□イベルメクチン
ニキビダニに対する効果があり、特に丘疹膿疱型の酒さに有効です。メトロニダゾールよりも効果が高いという報告もあります。日本では保険適用外です。
■内服薬
重症の場合には、抗生物質(テトラサイクリン系)や、炎症を抑える薬(漢方薬など)を服用することがあります。
■スキンケア
保湿や紫外線対策など、適切なスキンケアを行うことが大切です。
酒さの治療期間は、症状の程度やタイプ、体質などによって異なります。一般的には、軽症の場合は数週間から数ヶ月で症状が改善することが多いですが、重症の場合は数ヶ月から数年かかることもあります。
また、酒さは慢性的な疾患であり、症状が良くなったり悪くなったりを繰り返すことがあります。そのため、根気強く治療を続けることが大切です。
生活の中で気を付けること:化粧
女性の場合、化粧をすることが酒さを悪化させる原因となることがあります。
■化粧品による刺激
化粧品には、様々な成分が含まれていますが、中には酒さの炎症を悪化させる刺激となる成分もあります。例えば、以下のような成分は、酒さの方には刺激が強い可能性があります。
アルコール: 皮膚を乾燥させ、炎症を悪化させる可能性があります。
香料: 香料に含まれる成分が、刺激となることがあります。
防腐剤: 防腐剤の中には、刺激が強いものがあります。
界面活性剤: 洗浄力が強い界面活性剤は、皮膚のバリア機能を壊し、炎症を悪化させる可能性があります。
メイク方法による刺激
メイクをする際の摩擦や、クレンジング時の刺激も、酒さを悪化させる原因となります。特に、ゴシゴシと強くこすったり、何度も重ね塗りをしたりすると、皮膚への負担が大きくなります。
■化粧品を選ぶ際の注意点
酒さの方は、化粧品を選ぶ際に以下の点に注意することが大切です。
低刺激性: アルコール、香料、防腐剤などの刺激成分が含まれていないものを選びましょう。
敏感肌用: 敏感肌用に開発された化粧品は、刺激が少ないことが多いです。
パッチテスト: 新しい化粧品を使う前に、必ずパッチテストを行い、肌に合うかどうかを確認しましょう。
■メイクをする際の注意点
メイクをする際には、以下の点に注意しましょう。
薄塗り: 厚塗りは避け、薄く重ね塗りをしましょう。
摩擦を避ける: ゴシゴシとこすらず、優しく丁寧に塗りましょう。
清潔な道具: パフやブラシなどのメイク道具は、常に清潔に保ちましょう。
■クレンジングの注意点
クレンジングは、メイクを落とすために大切なステップですが、酒さの方にとっては刺激になりやすいものです。以下の点に注意して、優しくクレンジングを行いましょう。
クレンジング剤: オイルクレンジングやミルククレンジングなど、刺激の少ないものを選びましょう。
摩擦を避ける: ゴシゴシとこすらず、優しく丁寧に洗いましょう。
洗い残し: クレンジング剤が残らないように、しっかりと洗い流しましょう。
まとめ
酒さは慢性的な疾患であり、根気強い治療が必要です。自己判断で市販薬を使用したり、間違ったスキンケアを行うと、症状が悪化する可能性があります。必ず皮膚科専門医を受診し、適切な診断と治療を受けてください。
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【医療法人社団 俊爽会 理事長 小林俊一 監修】