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内科・皮膚科疾患のお話

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糖尿病の合併症

■糖尿病が引き起こす合併症とは?

 

糖尿病は、神経や目、腎臓などにさまざまな障害を起こすことが知られています。

また、心臓病や脳卒中など、直接死亡リスクに関係する動脈硬化を引き起こすこともわかってきました。

糖尿病は自覚症状がなくても、見えないところで合併症が進行しています。

そして、気がついた時には合併症のため、日常生活に支障があらわれているということが少なくありません。

しかし、きちんと血糖値をコントロールできれば合併症を予防できることがわかっています。そのためにも、しっかり治療を行い、きちんと血糖値を下げることが必要です。

 

■糖尿病の合併症

 

①糖尿病神経障害

糖尿病神経障害は、高血糖により手足の神経に異常をきたし、足の先や裏、手の指に痛みやしびれなどの感覚異常があらわれる合併症です。

これらは、手袋や靴下で覆われる部分に、“左右対称”にあらわれる特徴があります。痛みが慢性化する場合や、進行して知覚が低下した結果、足潰瘍や足壊疽となる患者さんもいます。自覚症状がある場合は、早めに医師に相談しましょう。

 

□神経障害の種類

神経障害による異常

症状の例

感覚の異常

皮膚の感覚には、感覚神経がかかわっています。


▶両側の足先からのしびれや痛み、冷感などがおきる

▶ものに触れた時の感覚が鈍くなる(画びょうやガラスの 破片を踏んでも気が付かないなど)

胃腸運動の異常

食べ物の消化には、自律神経が関わっています。


▶胃不全麻痺(胸焼け、吐き気、食欲低下、消化不良など がおきやすい)

▶便秘や下痢がおきやすい

心臓や血圧調整の異常

心臓にも感覚神経があります。また、血圧の調整には自律神経が関わっています。


▶無痛性心筋梗塞(心筋梗塞がおきると胸痛がでることが 一般的だが、心臓神経に障害があると痛みの症状がでな いことがある)

▶起立性低血圧(急に体を起こした時に血圧が下がって、 たちくらみがおきやすい)

▶頻脈や徐脈をおこす

四肢の異常

四肢の運動神経の障害で、筋力低下や筋萎縮がおきることがあります。


▶太ももやお尻の筋肉の萎縮や筋力低下

▶足の変形

▶上肢や下肢の痛みや痺れ症状

眼や顔面の異常

顔面の動きや感覚、眼球運動には脳神経が関与しています。この神経が障害されると以下の症状につながります。


▶眼球運動の障害

▶顔面神経麻痺など

泌尿器・生殖器系の異常

骨盤にある膀胱や生殖器の働きには自律神経が関わっています。


▶膀胱の機能障害(排尿障害、残尿)

▶勃起障害

発汗障害

汗の分泌には自律神経が関わっています。


▶汗をかかなくなる

▶乾燥肌になる

血糖コントロールに影響する異常

低血糖の症状出現や胃腸運動には自律神経が関わります。


▶無自覚性低血糖(ふるえや冷や汗などの低血糖症状が起 きにくく、低血糖の症状を自覚しづらい)

▶食べ物の消化スピードが変化し食後血糖の上昇に影響が でるため、血糖を下げる薬の調整が必要になる



□神経障害の予防

糖尿病神経障害は、高血糖による神経細胞の変化と、動脈硬化を介した神経細胞への血流不足(栄養不足)から生じます。そのため、神経障害の予防は血糖コントロールと動脈硬化予防の両方を行うことが重要です。

具体的には、以下のものが糖尿病神経障害の発症や進展と関連があるとされており、生活習慣の改善を心がけます。

 

・血糖コントロールの不良

 

・高血圧

 

・脂質異常

 

・喫煙

 

・飲酒

 

また、糖尿病罹病期間(糖尿病を発症してからの年数)は神経障害の発症と関連があるため、まだ糖尿病になっていない方に関しては糖尿病にならない、若しくは糖尿病になる時期を遅くするということが、当然ですが糖尿病神経障害の発症予防につながります。

 

②糖尿病網膜症

糖尿病網膜症は、高血糖により眼の網膜にある非常に細い血管がむしばまれていく合併症です。進行してしまうと失明に至ります。

糖尿病網膜症は、自覚症状がないまま進行していきますので、早期発見と進行予防・治療のために、年に1回以上眼底検査を行うことが必要です。

 

□糖尿病網膜症の検査

視力低下などの自覚症状は、網膜症が重症になるまで出てこないと言われています。

そのため、糖尿病の患者さんは、網膜症の診断を受けていない場合であっても、年に1回は眼科を受診して網膜症の検査を受けることが推奨されています。

これは、早く網膜症を見つけて適切な治療を行うことで、視力低下や失明が起きるのを防ぐ意味があります。

「糖尿病眼手帳」は、日本糖尿病眼学会が内科医と眼科医の連携を促進するために作成したツールです。「糖尿病連携手帳」にも、糖尿病網膜症の記入欄があります。

どちらも糖尿病網膜症の状態を共有する上で便利ですので、糖尿病を診療する医師と眼科医が違う医療機関にいる場合などは、医師と相談して使用するとよいでしょう。

 

□糖尿病網膜症の発症予防と重症化予防

適切な治療を行うことで、糖尿病網膜症になることを予防することができ、また一旦発症したとしても重症化するのを予防することができます(単純網膜症の場合は、改善する可能性もあります)。どのような治療がそれぞれの予防につながるか、みていきましょう。

 

・ 糖尿病の発症予防

糖尿病にならなければそもそも糖尿病網膜症にはなりません。また、糖尿病になってからの期間が長ければ長いほど、糖尿病網膜症になりやすいとされています。

つまり、同じ70歳の糖尿病患者さんでも、40歳のときに診断された人と69歳のときに診断された人における網膜症のあるリスクは異なり、前者の方が高いです。

 

・ 血糖コントロール

血糖コントロールが悪い人の方が、網膜症の発症や重症化が多いと言われています。また、臨床研究の中で、血糖を積極的に下げる介入を行なったグループの方が、緩やかな血糖コントロールを行なった群に比較して、糖尿病網膜症の発症率が低いという結果がでています。

一方で、急激に血糖を降下させると一時的に糖尿病網膜症が悪化する可能性があると言われており、既に網膜症を発症している場合には注意が必要です。

 

・ 血圧コントロール

高血圧単独でも網膜に病変を起こすことがあります(高血圧性網膜症)。その上、高血圧は糖尿病網膜症を悪化させるとも言われており、適切な降圧は網膜症の新しい発症と重症化を予防します。特に、アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害薬)とアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)と呼ばれる降圧薬は、網膜症の発症を抑える効果が高いと言われています。

 

・糖尿病腎症の発症予防

糖尿病腎症で起こる微量アルブミン尿も網膜症を進行させる因子と考えられており、これも血糖・血圧コントロール(特にACE阻害薬またはARBの使用)などで予防・改善することが可能です。

 

・脂質代謝異常の治療

複数の臨床試験において、フィブラート系と呼ばれる中性脂肪を下げる薬に網膜症の重症化を抑える効果があると言われています。

 

上に挙げた治療は、いずれも糖尿病網膜症の発症または重症化を抑えるという観点からは推奨される治療ですが、個々の患者さんにおいてはより複合的な観点からこれらの治療を行うか決めます。

例えば、血糖を下げるほど糖尿病網膜症が発症するリスクは下がりますが、一方で厳格な目標値まで血糖を下げるためにインスリンを使う必要があるとすれば、手間や費用もかかるだけでなく、低血糖を起こすリスクは上がります。どちらのほうが本人にとってよい治療かは、患者さんの年齢や低血糖が起きるリスクなどを考えた上で、本人と主治医が相談して決める必要があります。

分からないことがありましたら、主治医の先生と一度相談するとよいでしょう。

 

③糖尿病腎症

糖尿病腎症は、高血糖により、腎臓にある非常に細い血管がむしばまれていく合併症です。

進行すると、老廃物を尿として排泄する腎臓の機能が失われてしまうため、最終的に透析治療を要することになります。この合併症も自覚症状がないまま進行していきますので、早期発見のためには、定期的に腎臓の機能を検査する必要があります。

 

□腎臓の機能

腎臓はソラマメ状の形をしており、位置は腰の上あたりで左右に一対あります。主に尿を作る臓器として知られていますが、それ以外にもさまざまな働きを担っており、からだにとって重要な仕事をしています。

 

腎臓の主な仕事

・からだの水分量を調節する

 

・老廃物を排泄する

 

・電解質(ミネラル)のバランスを保つ

 

・血液を弱アルカリ性に保つ

 

・血圧を調整する

 

・血液を産生する為のホルモン(エリスロポエチン)を分泌する

 

骨を作るビタミンDを活性化する

 

□透析療法について

 

糖尿病腎症の発症早期は無症状であることが多いですが、腎機能が低下すると前述したからだの調節機能が弱まることでさまざまな症状・合併症がおこります。

 さらに機能低下が進行し末期腎不全に至ると、腎臓の機能を代行する治療である「透析療法」が必要になります。

透析療法は「血液透析」と「腹膜透析」の2種類があります。

 

□糖尿病性腎症の予防

糖尿病腎症の予防は血糖コントロールと動脈硬化予防の両方を行うことが重要です。

以下のものが糖尿病腎症の発症や進行と関連があるとされています。

 

・ 血糖コントロールの不良

 

・ 高血圧

 

・ 脂質異常

 

・ 喫煙

 

感染症や脱水も腎症を進行させることがありますので、感染症対策や水分摂取を心がけましょう。

また、腎機能が低下すると使えなくなる薬や用法・用量の調整が必要となる薬がありますので、市販薬を使用する場合は、事前に主治医に相談しましょう。

糖尿病腎症がある方は、神経障害網膜症大血管症などの発症や進行につながりやすいと言われています。定期的に受診し、糖尿病の他の合併症についてもチェックするようにしましょう。

 

④動脈硬化(脳卒中・心臓病)

近年では糖尿病は動脈硬化の原因となり、心臓病や脳卒中をも引き起こすとされています。特に、食後の高血糖が動脈硬化を進行させることが知られています。

動脈硬化を抑えるためには、糖尿病に加え、高血圧、脂質異常症、肥満をしっかり管理することが大切です。これら4つの生活習慣病が合併すると、動脈硬化の進行が加速し、心臓病や脳卒中を起こす危険が一段と高まります。

そのため、これら4つの生活習慣病は「死の四重奏」と呼ばれています。

 

■糖尿病の合併症を起こさない、悪化させないためには

 

・血糖値を目標の値にコントロールする

 

・糖尿病の治療を中断しない

 

・血圧・コレステロールの値を望ましい範囲にコントロールする

 

・喫煙をしない

 

・体重を望ましい範囲にコントロールする

 

が大切です。

何かご不明点ございましたら当院までお問い合わせください。

東京メトロ東西線・葛西駅西口より徒歩5分、葛西内科皮膚科クリニックです。

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