円形脱毛症は、その名の通り、頭皮に円形または楕円形に境界のはっきりした脱毛斑ができる病気です。一般的には頭部に見られますが、眉毛、まつ毛、ひげ、体毛など、全身の毛に脱毛が及ぶこともあります。
突然、ごく一部の髪の毛が抜け落ちてしまうことから、ご自身で気づくこともあれば、美容院で指摘されて初めて知るケースも少なくありません。
以前は「ストレスが原因」と広く認識されていましたが、近年では「自己免疫疾患」であるという説が最も有力です。
私たちの体には、細菌やウイルスなどの異物から体を守る「免疫システム」が備わっています。しかし、自己免疫疾患では、この免疫システムに異常が生じ、本来攻撃すべきではない自分の体の一部を誤って攻撃してしまうことがあります。
円形脱毛症の場合、毛根にある毛を作る細胞(毛母細胞)が、免疫細胞の一種である「Tリンパ球」に異物と誤認されて攻撃されてしまいます。これにより、毛が成長する途中で抜け落ちてしまい、脱毛が起こるのです。
なぜこのような免疫の異常が起こるのか、その詳しいメカニズムはまだ完全には解明されていませんが、以下のような要因が関連していると考えられています。
遺伝的素因 ご家族に円形脱毛症や他の自己免疫疾患、アレルギー疾患(アトピー性皮膚炎、気管支喘息、花粉症など)がある場合、発症しやすい傾向があります。円形脱毛症患者さんの約4割にアトピー素因が認められるとも言われています。
精神的・肉体的ストレス ストレスが直接の原因ではないとされていますが、ストレスが引き金となり、免疫のバランスを崩すきっかけとなる可能性は指摘されています。
感染症 風邪などのウイルス感染症がきっかけとなることもあります。
他の自己免疫疾患の合併 橋本病などの甲状腺疾患、尋常性白斑(皮膚の一部が白くなる病気)、関節リウマチなど、他の自己免疫疾患を合併しているケースも見られます。
円形脱毛症は、脱毛の範囲や進行の仕方によっていくつかのタイプに分けられます。
単発型 最も一般的なタイプで、コインのように丸い脱毛斑が1箇所だけできるものです。比較的治りやすいとされています。
多発型 複数の脱毛斑が頭部に散在してできるタイプです。
蛇行型 脱毛斑が帯状に広がり、生え際から襟足にかけて蛇が這うように見えるタイプです。
全頭型 頭部全体の毛がすべて抜け落ちてしまうタイプです。
汎発(ばんぱつ)型 頭髪だけでなく、眉毛、まつ毛、ひげ、体毛など、全身の毛が抜け落ちてしまう最も重症なタイプです。
単発型や多発型は自然に治ることもありますが、脱毛範囲が広いタイプや進行性のタイプは、専門的な治療が必要となります。
円形脱毛症の治療は、脱毛の範囲、重症度、発症からの期間、年齢などによって選択肢が異なります。日本皮膚科学会の「円形脱毛症診療ガイドライン」に基づき、様々な治療が行われます。
主な治療法には以下のようなものがあります。
炎症を抑え、毛根への攻撃を鎮めるために使われます。軽症の円形脱毛症に用いられることが多く、まず第一に試される治療法です。
局所免疫療法(SADBE療法、DPCP療法など) 人工的にかぶれ(接触皮膚炎)を起こさせることで、毛根を攻撃している免疫細胞の働きを変え、発毛を促す治療法です。広範囲の脱毛や、他の治療で効果が見られない場合に行われます。
ステロイド局所注射 脱毛斑に直接ステロイドを注射し、局所の炎症を強力に抑える治療です。脱毛斑の数が少ない場合や、範囲が小さい場合に選択されます。痛みを伴うため、小児には通常行われません。
紫外線の一種であるエキシマライトやナローバンドUVBなどを脱毛部に照射し、免疫細胞の働きを調整して発毛を促します。
脱毛部に液体窒素を軽く当てることで、皮膚に軽い炎症を起こし、免疫反応を調整する目的で行われることがあります。
円形脱毛症は、早期に治療を開始するほど、治癒までの期間が短く、改善率も高い傾向にあります。特に、脱毛の範囲が広がる前に治療を始めることが大切です。
「たかが抜け毛」と放置せず、気になる脱毛が見られたら、一人で悩まずに、まずは皮膚科を受診してください。当クリニックでは、患者さんの症状やライフスタイルに合わせて、最適な治療プランをご提案し、発毛に向けて全力でサポートいたします。
また、ウィッグやスカーフなどを使用することで、見た目の不安を軽減し、精神的なストレスを和らげることも大切です。お悩みや不安なことがあれば、何でもお気軽にご相談ください。
~~監修 医療法人社団 俊爽会 理事長 小林俊一~~